8月15日 東京九段下の風景
もう五日前ですが、敗戦記念の日に、靖国神社に行ってきました。
いよいよドキュメンタリー映画の撮影に入っていくわけですが、とにかく8月15日の風景だけはビデオに収めておこうというわけです。
境内を汗みずくで歩いていると、正午になりました。
サイレンと黙祷のあと、天皇の短い演説。外を歩いていても、境内にその言葉が響きわたります。
近頃、引退を事実上宣言したその人は、「深い反省」という言葉を発し、靖国に集まる人々はしきりに「英霊に感謝し、日本人の誇りを取り戻せ!」と連呼していました。
軍歌を愉しそうに歌っているグループもいましたね。
若者が軍服を着て国旗を掲げています。おそらく二十代の前半かな。その向こうにかなり高齢の男性がぼろぼろの軍服を着て立っていて、若者が「あの方はホンモノの予科練です」と、少し気恥ずかしそうに語っていたのが印象的です。
「海ゆかば」を歌っている人をあちこちに見かけます。ひとり口ずさんだり、数人で歌ったり。茶髪の兄ちゃんのTシャツにプリントされていたり。
海ゆかば 水漬く屍
山ゆかば 草むす屍
大君の辺にこそ 死なめ かへりみはせじ
こんな歌です。みな心、うちふるわせて、この歌をうたう。
この行列は右翼の街宣とはちがい、整然と行儀よく、九段の街並みを歩いていました。
「美しい日本をありがとう!」などと声援がかかります。海ゆかばを歌いながら拍手を送るご婦人もいました。
5時ころからは、靖国神社に「反天皇制」を掲げデモる「反天連」と、そのカウンター(在特会系の団体)の激しい罵声が、スピーカーで増幅されてぐわんんぐわんと響きました。
「死ね!」「朝鮮人出ていけ!」「ケーサツは腰のものを抜いて打ち殺せ!」
などと、二時間以上がなっていましたね。
えげつない言葉を機関銃のように連射するのですが、まわりもみんな「そうだそうだ」とうなづいている。
天皇制に反対する人間はそのくらいの言葉を投げつけられてもかまわない。そういう暗黙の諒解があるようです。
午前中から靖国にいたので、計7時間ほど、九段下周辺をうろついたことになります。人人人でぎゅうぎゅうの遊就館も時間をかけて見たし。
家に帰りつくと、どっと疲れました。
でも、すぐにブログに書かなかったのは、疲れたのもあったけど、しばらくその「意味」を、考えてみようと思ったのです。
言葉について。
15日に九段下周辺で発せられた多くの言葉、天皇の発した言葉をふくむ、多くの言の葉(ことには)について。
そうしているうちに、ふとまったく予期していなかったイメージが頭に浮かんできました。
中学生で聴力を失った画家、松本竣介です。
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