蛇の古語「カカ」「カガ」
吉野さんの本です。
蛇については相当書いてますね。
その中で、蛇の古語は「カカ」「カガ」であると、繰り返し述べています。
例えば、酸漿(ほおずき)のことを、古事記では「カガチ、アカカガチ」と言いますね。
八俣の大蛇のことを、
「その目は赤加賀智(アカカガチ)の如くにして、身一つに八頭八尾あり」
などとあり、大蛇の目を酸漿にたとえています。
また、少名毘古那神(スクナヒコナノカミ)が、波の間から現れたとき、
乗っていた船が羅摩船(カガミブネ)で、これはヤマカガミという植物だそうです。
この他、カガミグサという植物もあり、両者ともに蔓科。
長くて地を這うもの、なにかにまつわりつくものとして、蛇と共通する。
ではなぜ少名毘古那神は、「羅摩(カガミ)=蛇」というような乗り物で現れたのか。
ここらへんの吉野さんの説明が、なかなか興味深い。
「古代日本人は太陽の昇るところ、東方の海の彼方、沖縄でいうニライカナイを、祖霊の在るところ、生命をはじめすべての物のあるところとして信仰した。生命の種はそこから渡って男性の中に貯えられる。きわめて《小さい男》の称を負う少彦名神は、種神・生命の源・精虫の象徴であって、その神格化ではなかったろうか。」
なるほど。「種神→蔓科の植物→蛇→男根→精虫」という円環連想ですね。
そういえば生麦の浜も東向き。蛇を作った茅は、浜辺にたくさん自生していました。
生命の源が海から運ばれて茅にからみつく。それを編んで蛇に見立て、
豊漁・豊饒を願い、祭が終わると海の向こうの常世に帰した、という仮説も成り立ちますね。
吉野さんによると、古代の歌垣(カガイ)も、「カガ」すなわち蛇だそうで、
歌垣といえばいにしえの乱交パーティ。男女の性が解放される非日常の時間です。
盆踊りの原点みたいなものですが、もしかすると生麦の祭も、かつてはそういう時間だったのかもしれません。
ただ、祓戸四神のうちの速秋津姫が「持ちカカ呑みてむ」などといって、蛇に喩えられた神が、「罪・穢・ケガレ」を海に流し去ってくれると考えたように、生麦の祭も、「厄除け」という意味合いが、現在にまで強く残っているようです。
そういった蛇の力を吉野さんは、自然の威力の象徴としてとらえて、古代人の自然に対する畏怖の念が神話的想像力・創造力を喚起し、さまざまな民俗的遺産として今日も見られると言いたいのでしょう。
続く
2013-06-28 02:20
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コメント(2)
ジヤ、カ
「同語反復か」とお考えですか。
by 1001 (2013-06-29 22:58)
今日の記事で「邪もカも」という説を立ててみましたが、ちょっと苦しいかもです。いかがでしょう。
by wakaken (2013-06-30 14:07)